教養教育課外講座

演題:ミツバチは本当に協力的か?  [講演スライド(PDF)]

講師:佐藤 俊幸(東京農工大学 共生科学技術研究院)

日時:1110() 16:30〜      会場:教養教育1号館3階132教室

内容:
@ミツバチのコロニー内の対立:ハチやアリの高度な社会は、彼らが血縁度の高い集団を形成することで、維持されていると考えられてきました(血縁選)。しかしミツバチは、女王が10匹以上のオスと交尾しているので、コロニー内の血縁度は決して高くありません。また、ミツバチの新女王は姉妹が互いに殺しあいます。働きバチも、女王の目を盗んで卵を産むこともあります。その一方で、働きバチは異父姉妹の働きバチが産んだ卵を食べることで、抜け駆けを阻み、社会は維持されているのです(相互監視)。

Aアリの多女王制:一般的に、卵を産む女王は1匹だけ(単女王制)と思われていますが、アリでは女王が多数存在する種(多女王制)が珍しくありません。複数の家系が混在することで血縁は低くなりそうですが、遺伝マーカーを用いた調査で、兄弟と近親交配することや新女王が巣内に居残ることで、高い血縁度が保たれていることが分かってきました。

B多女王制の進化:アリには何故、単女王制と多女王制の種がいるのでしょう?ヤマヨツボシオオアリとナワヨツボシオオアリは、形態がそっくりな近縁種ですが、前者は多女王で後者は単女王です。両種の分布と攻撃性を比較した結果、寒い冬を過ごすには、多数の女王でたくさんの働きアリを生産する必要があると分かってきました。

講演者の最近の業績:
1. トビイロシワアリは子育てに適した暖かい場所に巣を作る 2006
Territorial behavior and temperature preference for nesting sites in a pavement ant, Tetramorium tsushimae.
Insectes Sociaux 53(2):141-148.

2. 多女王制のヤマヨツボシオオアリは、いつどんな相手と闘うか? 2005
Factors affecting internest variation of aggressiveness in a polygynous ant, Camponotus yamaokai.
Entomological Science 8(3):277-281.

3. チクシトゲアリのコロニー共同創設時における女王の表現型と行動 2005
Queen phenotype and behaviour during cooperative colony founding in Polyrhachis moesta.
Insectes Sociaux 52(1):19-25.

4. アカネズミの移動は市街地によって阻害されている:mtDNA解析による評価 2004
Population structure of the large Japanese field mouse, Apodemus speciosus (Rodentia: Muridae) in suburban landscape, based on mitochondrial D-loop sequences.
Molecular Ecology 13(11):3275-3282.

5. アミメアリの敵対性:餌を争わない相手とは戦わない 2003
Encounter-induced hostility to neighbors in the ant, Pristomyrmex pungeus.
Behavioral Ecology 14(5):713-718.

推薦人:理学部 生物学科 廣田忠雄