研究の目標

放射光およびレーザーなど先端光源を用いた時間分解分光法によって固体中の物理現象における動的過程の本質を解明する。原理原則の理解を通して物質が本来持つ性能を極限まで高め、物理的な視点で物質開発を行い、豊かな暮らしの実現に向けて社会的責務を果たす。

研究プロジェクト(現在進行中)
未知の異常金属相を探求する

絶縁相が金属相に変化する金属絶縁体転移(MIT)は熱、光、圧力などの変化によって起こることが知られており、中でも光誘起相転移は固体物理学において最も注目されている現象である。VO2薄膜では基板と作製法を変えるとMITの過程において結晶では現れない多彩な金属相がX線回折測定で観測される。このようなVO2薄膜では、光をあてると未知の異常金属相が現れる可能性があり、光励起状態を介した異常金属相の形成過程を通じて電子間相互作用と電子格子相互作用が拮抗する系の物理を研究するのに都合が良い。遷移金属酸化物を中心に時間分解分光の手法を使って、光誘起反射率変化を調べた結果、光照射によって負の反射率変化が起こっており、この現象が絶縁相から金属相への相転移によって起こっていることを明らかにした。

なぜ生体アミノ酸はキラリテイを持つのか

アミノ酸には左手型分子(L体)と右手型分子(D体)が存在し生命を形作るのはなぜかL体のみである。アミノ酸がキラリティを獲得した過程では宇宙空間において円偏光が重要な役割を果たしたとする説が現在、有力である。こうした背景から円偏光を用いた吸収スペクトルの測定が行われてきた。過去の測定で使われたのは溶液や薄膜であり、溶媒や基板による影響がないとは言い切れない。我々は真空紫外領域の固体分光ビームライン(右図)をUVSORに建設して直線偏光を用いてアミノ酸単結晶の偏光反射スペクトルを測定し、円二色性が本当に再現できるかどうかを調べている。

シンチレーターの極限性能を追求する

放射線検出器の性能を左右する心臓部であるシンチレーター結晶で問題となっているのは、光誘起欠陥の形成である。今日に至るまで、その素性は明らかにされていない。このプロジェクトでは、最近注目されているCe:GAGG結晶(右図)の光誘起欠陥の素性を光照射下において調べている。熱発光グロー曲線を様々な発光波長に対して測定し、捕獲準位から光励起キャリアが放出される様子を可視化することに成功した(右図)。詳細な解析の結果,格子欠陥から放出された電子が熱アシスト型トンネリング再結合によってCe4+イオンサイトで輻射消滅することを明らかにした。その正体を明らかにするために、光誘起赤外透過率変化を調べている。

↑ Page Top