なぜ物性理論? ”More Is Different” の世界

物性の魅力とはなんでしょうか?これは好みの問題になってしまうかもしれませんが、私は、協力現象に惹かれました。電子が多数集まることで、少数個では あり得なかった状態が実現するのです。アメリカの物理学者P. W. Andersonはこれを"More Is Different"と表現しました。磁石の実現はよい例です。一つ一つは小さな電子の磁化が、低温で向きを揃えることで磁石になるのです。高温ではバラ バラだった磁化の向きが、低温で揃っていく様子は、意外と簡単なモデルで説明がつきます。大学生になれば分かるでしょう。

温度や圧力を変えることで状態がガラッと変わってしまう。最近では光を当てることで状態が変わる物質も研究されています。こうした状態変化がなぜ起こるの か、と言う問題は、実は相互作用を如何に取り扱うかという問題と密接な関係があります。なぜなら、粒子(ここでは電子)が他の粒子と相互作用しているから こそ、物質が全体にわたって何らかの秩序(磁化が揃うなど)を持ち、そして違う秩序状態へと変化していくからです。協力現象という名前には、相互作用を通 して複数の粒子が協力してある状態になる、と言う意味があるのです。

また、物性の研究は、世の中の便利に貢献できる学問でもあります。新しい工業製品の開発には、基礎的な物性研究は不可欠です。上で話した協力現象は、コン ピューターなどの性能向上には欠かせない知識です。研究部門を持った企業の社員の中にも、基礎的な物性研究を行い物理学会等で講演する人がたくさんいま す。

資源のない日本は技術立国として生き残りを賭けています。民間企業も同じです。多くの企業が研究部門を持って新製品の開発に力を注いでいます。コンピュー タ能力の向上は理論家にも新物質発見のチャンスをもたらそうとしています。仮想的な分子や固体を考え、電子状態を計算することで、望ましい機能を持った物 質を予言するのです。大学でこうした研究の基礎を学べば、みんなにも新発見のチャンスがあるのです。



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