What’s topological soliton?
What’s topological soliton?
「場」の量子論は、素粒子を記述する標準的な理論です。「場」とは電磁場などのことで、4次元時空の各点で定義される様々な関数のことです。場には様々なものがありますが基本的に波の性質を持ち、場を通じてエネルギーが時空中を伝搬していきます。特に場を「量子化」することで多数の素粒子の量子力学を扱うのが場の量子論です。
エネルギーが0の状態
エネルギーが高く波が
発生している状態
さて、ソリトン(soliton)は solitary(孤立した)+ on(粒子)のことであり、元々は運河を伝わる長寿命の孤立した波として発見された。その後、非線形波動方程式の研究などにつながり数学の一分野として発展した。
既に述べたように素粒子を記述する場の量子論の中心的役割を果たすものが「場」であるが、場は古典的な側面と量子論的側面の二つの顔を持っている。古典的な側面とは場を伝わる波としての特徴であり、素粒子物理学でソリトンと言えば、場の方程式の孤立した波(エネルギー)のことを指すのが普通である。
中でも位相的(トポロジカル)ソリトンと呼ばれるソリトンは、時空の境界や場の配位空間のトポロジーだけで性質が決まってしまい、小さな摂動などでは消滅することが無い大変安定で独立な存在で、まるで一つの粒子のように振る舞う。素粒子論において最も重要なソリトンはゲージ理論の非摂動効果を理解する上で欠かせない、インスタントン(広義のソリトン)やモノポール(単磁荷)である。
トポロジカルソリトンを理解するのに手頃な理論の一つに非線形シグマ模型と呼ばれるものがあるので、それを例にソリトンの具体例を紹介しよう。特に2次元球面を配位空間に持つCP(1)非線形シグマ模型(3次元時空)を例にとることにする。
エネルギーの一番低い状態(基底状態)は上図のように全く波が立っていない状態である。この次にエネルギーが低い状態として、トポロジカルソリトン(専門用語ではランプとかスカーミオンという)が一個の状態がある。
ソリトン1つ
このソリトンにはエネルギーが等しい兄弟がいる。エネルギーは等しいが例えば大きさがことなる。
変形したソリトン
エネルギーは上と同じ
さて、二つのソリトンがぶつかるとどうなるだろうか?
二つのソリトンが衝突する様子を見てみよう。
見ているだけでも奇麗ですよね。ソリトンとはこのようなものなのです。このソリトンの特徴は
1)衝突のずっと前とずっと後でそれぞれ粒子のように
独立性(粒子性)を保っている
2)衝突時にリングのようにぐにゃりと変形する
3)衝突すると90度方向が変わる
ということです。
(注意:上の図はある種の思考実験であり、実際の数値計算の結果ではありません。)
もっとたくさんのソリトンが同時に衝突するとどうなるでしょうか?以下の図に20個のソリトンが衝突する様子を描いてみました。
ソリトン2個の衝突の場合と同じようにやはり衝突時に大きなリングが現れる様子が良く分かります。
トポロジカルソリトンのダイナミクスの数値計算は非線形微分方程式の解析でありなかなか大変ですが、上のような美しい図を描くことが出来るとそれだけで結構楽しいです。
それだけでなく、ソリトンはゲージ理論の本質を理解する上で欠くことの出来ない存在であることが知られていて、素粒子理論を理解する上でもとても重要です。
さらに、宇宙論においては高温初期宇宙が冷える過程でソリトンが形成される可能性があり、宇宙紐による重力レンズ効果などが観測されるのではないかと言われています。また、物性分野でも超伝導や超流動物質にトポロジカルな渦や壁が出来ることが知られていて盛んに研究が勧められています。