相対論的な渦の散乱 2

 

参考文献:
























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さて、渦と反渦が衝突することを数値計算によって観察したわけであるが、そもそもなぜ消えてしまったのだろうか?このことを理解するためには渦度に注目する必要がある。既に述べたように、場の理論に現れる渦は量子化されていて、その渦度が1とか−1とかとびとびの値しか持てない。これが、渦が安定であたかも粒子のように振る舞う理由である。渦度が1であるものと−1であるものが同時に存在すれば全体として、


1+(−1)=0


となり、渦度ゼロになる。したがって、渦と反渦が衝突した後には渦がなくなってしまうわけである。


では、先ほど見た渦と反渦の対消滅の様子をより良く理解するため,別の「目」で観察してみよう。


まず、渦と反渦の違いを理解しよう。下の2つの図を見て欲しい。

この2つの図は同じ状況を別の視点から見た図である。最初の図はエネルギー密度をプロットしたものである。粒子と反粒子のように渦と反渦の質量は全く同じため、エネルギーをプロットしても、渦なのか反渦なのかは直ぐには分からない。そこで2番目の図を描く必要が出てくる。この図は複素スカラー場の位相をベクトルとして描いたものである。矢印の流れを観察すれば左側の渦と右側の反渦の違いが一目瞭然であることが見て取れる。


渦(反渦)の周りを一周すると、矢印が回転していることに注意すべきである。渦の周りを時計回りに一周すると、その円周上の矢印が時計回りに一回転することが分かるだろうか?


一方で、反渦の周りを時計回りに一周すると、その円周上の矢印は反時計回りに一回転している。この矢印の回転の向きの違いが渦と反渦の違いの本質である。


時計回りの矢印の回転と反時計回りの矢印の回転がぶつかれば、結局矢印の回転はなくなってしまうのは明らかである。これが渦と反渦が衝突することで消えてしまう理由なのです。


では、この第二の視点から渦と反渦の衝突を観察してみることにする。

左側の図と右側の図は同じ状態を表している。右側の図の時間発展を見ると、時計回りの矢印の巻き付きと反時計周りの矢印の巻き付きが衝突して、ほどけてしまっている様子が見て取れると思う。


つづく